バスター・キートン出演作「アウトウエスト」

 原題「OUT WEST」 製作国アメリ
 コミック・フィルム製作 パラマウント・ピクチャーズ配給
 監督・脚本・出演ロスコー・アーバックル 出演バスター・キートン アル・セント・ジョン

 ファッティは、西部の小さな村落にやってくる。村落でバーをやっているのがキートン。アル・セント・ジョン演じるバーに強盗が入るが、偶然やってきたファッティがやっつけてしまう。アルは復讐のために、ファッティと仲良くなった女性を連れ去ってしまうが、ファッティとキートンは女性を取り戻す。

 ストーリーは、当時数多く作られていた西部劇をパロったもので、取り立てて優れてはいない。「アウトウエスト」を活気付けているのは、細かいギャグだ。たとえば、ポーカーで不正をした男をキートンが撃ち殺す。カードを確認してみると、別に不正をしなくても勝負は変わらなかったことが分かる。またたとえば、強盗がやってきてバーテンを撃ち殺してしまう。キートンはすぐに準備してあった「バーテン募集中」の看板を即座に出す。といった死を扱ったブラックジョークが「アウトウエスト」の魅力になっている。

 このブラックジョークを支えているのは、どこか薄気味悪い雰囲気を持っているキートンだ。それと比べると、ファッティのギャグ(馬の飲む水に酒を飲ませるなど)はそれほど面白くない。

 アーバックルとキートンの喜劇を見ていると、特殊効果を使っていることがわかる。逆回しを使ったり、二重写し(列車の上を男たちが思い切り走るシーンを横から捉えたショットはおそらく二重写しだろう)を使ったりしている。チャップリンとの差異がこの辺りにある。チャップリンはあくまでも自分の芸を見せるためにカメラを使った。

 ちなみにこの作品には、バーにいる白人たちが、黒人の青年の足元を銃で撃って踊らせるというシーンがある。こういったことは当時の西部ではあったことなのだろうが、残念なのはギャグとも何ともなっていないということだ。もしかしたら、アーバックルは映画の中の白人たちがそうであるように、黒人が踊る姿を見ること自体が楽しいことだと思ったのかもしれない。そうだとしたら、少なくとも私には笑えない。

バスター・キートン短篇全集 1917-1923 [DVD]

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