メアリー・ピックフォード出演作「AMARILLY OF CLOTHESLINE ALLEY」

 製作国アメリ
 メアリー・ピックフォード・カンパニー製作 アートクラフト・ピクチャーズ配給
 監督マーシャル・ニーラン 脚本フランシス・マリオン 出演メアリー・ピックフォード

 貧しいアイルランド移民の娘であるアマリリーは、ゴードンと付き合っている。ある日金持ちのテリーに気に入られたアマリリーは、テリーの母親のところに住むことを勧められる。そんなアマリリーを見て、ゴードンは身を引こうとする。

 メアリー・ピックフォードといえば、前年に公開された「A LITTLE PRINCESS」(1917)のような少女役で全米中の人気を呼んだ女優として有名だ。そして、ピックフォード自身は大人の女性も演じたいと思っていたと言われている。

 この作品は、そんなピックフォードが少女役ではなく、若い女性役を演じた作品である。当時26歳だったピックフォードにとっては、10代後半から20代前半と思われるこの映画の役柄はそれでも若いのだが、それでも「A LITTLE PRINCESS」のように10歳の少女よりは大人の役柄だ。

 ピックフォードはこの作品で、極めて自然で魅力的な演技を見せてくれているように思える。仕草は若々しくて活力に溢れ、笑顔は「アメリカの恋人」というピックフォードのニックネームにふさわしく輝いている。

 この作品は、洗濯屋を営む貧しいアイルランド移民の物語でもある。上流階級の人々がピックフォード演じるアマリリーを「実験」と称して上流階級の生活をさせるという傲慢な態度を取る(エディ・マーフィー主演の1983年作品「大逆転」を思い出させる)のに対して、アイルランド移民たちはみな活力に溢れて魅力的に描かれている。特に、5人の男の子たちを束ねるアマリリーの母親の肝っ玉母さんぶりが印象に残る(ケンカで負けた子供に対しては、仕返しをするまで家に入れない)。また、アマリリーと付き合っているゴードンの、アマリリーへの一途な思いは見ていて恥ずかしくなってくるほどだが、なんとも言えない甘酸っぱさを感じさせる。

 アイルランド移民たちの魅力的な様子に対して、上流階級の人々はどこか乾燥している。テリーの母親の親切は押し付けがましいし、テリーの友人たちがアマリリーのキス争奪のオークション始め、テリーが勝利してキス・シーンとなるという展開も、その見た目のロマンティックさに反して、どこか空々しい。

 特筆すべきは、ピックフォードの盟友である脚本家のフランシス・マリオンが、こういった社会批判的な側面をさりげなく描いているという点だ。上流階級の人々も悪い人たちではないように描かれているが、アイルランド移民の人々と比べると何かが欠けているかのように感じられるのだ。

 アマリリーは上流階級のテリーではなく、同じ貧しいアイルランド移民のゴードンを選ぶ。マリオンの上流階級とアイルランド移民の描き方は、アマリリーの選択が正しいように感じさせる。アマリリーはテリーにこう言う。「アイスクリームとピクルスじゃ合わないわ」と。これは決して負け惜しみだったり、卑屈になっているわけではない。このときのアマリリーが自分たちのことを指す「ピクルス」は、特上のピクルスだ。

 ピックフォードはフランシス・マリオンという盟友の力を得て、観客が自らに求める姿を崩すことなく、そして自身の魅力を損なうことなく、自らの実年齢と近い役柄を演じた社会派的な作品を生み出した(製作はピックフォード自身のプロダクションである)。

 この作品は、ピックフォードの映画の魅力が、世間的に広まっているピックフォードのイメージだけにとどまらないことを証明している。

Amarilly of Clothesline Alley [VHS] [Import]

Amarilly of Clothesline Alley [VHS] [Import]