映画評「BEAUTIFUL JAPAN」 

 製作国アメリ
 The Benjamin Brodsky Moving Picture Co製作 
 製作 Benjamin Brodsky

 アメリカ人であるBenjamin Brodskyが日本で撮影したフィルムをつなげた作品。元々は2時間を超える作品だったが、現在では15分しか残っていないらしい。

 収められているのは横浜港における船の出港の様子、静岡のお茶畑の様子、アイヌの儀式の様子、芸者によるお座敷の様子である。

 フランスのリュミエール兄弟は自分たちが開発したシネマトグラフを携えた映写技師・カメラマンを世界中に派遣して、撮影を行った。日本にもコンスタン・ジレル、ガブリエル・ヴェールといった人物がやってきて、日本の様子を撮影していった。彼らが撮影したフィルムは今でも残っているものも多い。この作品を見ていると、撮影対象がほぼ同じであることに気づく。

 当然と言えば当然なのだが、日本ならではの光景が撮影されている。お座敷の様子はその最たるものなのだろう。当時、かなり近代化が進んでいたであろう部分は冒頭の横浜港の様子くらいしかない。ほとんどのフィルムが消失しているため、完全版がどうであったかまでは今ではわからないが。

 リュミエール兄弟の作品と、この作品の共通点としておもしろいのは、両者ともアイヌが撮影対象となっている点だ。日本としては、積極的にPRしたい部分ではないと思われる先住民の儀式が撮影対象となっている点は、近代化を進めたい日本の姿勢と、日本を新奇な目で捉えたい欧米の視線の間のギャップを感じさせる。

 ちなみに、この作品の撮影は日本政府の鉄道の宣伝にも使われ、Brodskyらを乗せた列車には横断幕がつけられて、日本全国を走ったのだという。