映画評「MICKEY」 メイベル・ノーマンド出演作

 製作国アメリ
 メイベル・ノーマンド・フィーチャー・フィルム製作 FBO配給
 製作・出演メイベル・ノーマンド 製作マック・セネット
 
 西部で育てられた若い女性ミッキーは、東部に住む伯母に引き取られることになる。社交界になじめないミッキーは持て余されるも、西部にいた頃に恋に落ちた男性ハーバートと偶然再会する。

 キーストン社の短編コメディでスターとなったメイベル・ノーマンドが、自身のプロダクションで製作した映画である。といっても、キーストン社の主宰者だったマック・セネットがメイベルのために興したプロダクションであり、メイベル自身に映画的な野心があって設立したわけではなさそうだ。作品もこの作品しか残していない。映画は大ヒットし、この映画とセットで売出されたレコード「MICKY」も大ヒットしたという。

 ちなみに、この作品は製作から公開までに時間がかかっている。製作中に、恋人だったマック・セネットの浮気を目撃したメイベルが、浮気相手から頭に花瓶を投げられるなどの出来事があり、メイベルの精神状態がよくなかったためだという。

 主役のミッキーを中心に映画は進む。メイベル・ノーマンドのチャーミングさが強調されているが、個人的にはそれほどの魅力を感じなかった。公開時26歳だったメイベルは、西部のシーンでは快活に見えるが、東部のシーンでは年齢の割に老けて見える。ストーリー的には適切なのかもしれないが、メイベルの魅力にスポットを当てた映画として考えると、マイナスのように思える。

 ハンサムな男性との恋、シンデレラ的なストーリーと、当時よく作られたタイプ(今もだが)の映画で、ストーリー的には平凡と言える。だが、メイベルの快活な魅力を映し出すために、高い崖の上から湖にダイビングするというセックス・アピールを強調したシーンが挿入されている。またラストでは、メイベルが騎手となって競馬のレースに参加して見せる(このシーンはメイベル自身が演じているように見える)。

 メイベル・ノーマンドがスターであったことを、この映画は証明している。チャールズ・チャップリンのキーストン時代の共演者としてだけではないメイベル・ノーマンドがここにいる。