映画評「TARZAN OF THE APES」

 製作国アメリ
 ナショナル・フィルム・コーポレーション・オブ・アメリカ製作 ファースト・ナショナル・エキジビターズ配給
 監督スコット・シドニー 原作エドガー・ライス・バロウズ 出演エルモ・リンカーン

 バロウズの著名な原作の映画化である。バロウズが正式に映画化を認めた初の作品である。

 アフリカで生まれ、チンパンジーに育てられるというターザンの出自と、その後のジェーンとの出会いなどが丹念に描かれている。この作品で自己紹介を終えたターザンは、「ADVENTURES OF TARZAN」(1921)で本格的にジャングルの中を暴れまわる。

 基本的に原作を忠実になぞられた脚本は、ストーリーの面白さを伝える一方で、第三者的視点で描かれているためにサスペンスや興奮に欠ける。とはいえ、半裸の男性(少年時代は全裸)が動き回り続ける映画など、これまでにはなかったであろうし、ジャングル(実際はルイジアナ州で撮影)の描写のエキゾチックな魅力もあり、スペクタクルとしての見どころは十分だ。

 初のターザン役としてスターとなったリンカーン(ちなみに、当初はウィンスリー・ウィルソンという役者が演じる予定だったが、徴兵によりリンカーンが演じることになった)は、大きな体で原始人のような迫力を持っており、後年のスマートで筋肉質なターザンのイメージとは異なる。リンカーンのターザンに魅力を感じるかは、人それぞれだろうが、ポスターなどに描かれているリンカーンは少し細めに描かれているのは面白い。

 たくさん登場するチンパンジーは、人間によって演じられている。時折、人間くさい動きを見せるのは御愛嬌といったところだろう。