ドイツの大作史劇が、イタリアのお株を奪う

 ドイツでは、「カルメン」(1918)あたりから、大作が多く作られるようになっていた。「パッション」(1919)、「フィレンツェのペスト」(1919)といった作品が該当する。かつてのイタリア史劇は、ドイツの大セット撮影によってお株を奪われる形となっていた。

 後にハリウッドでも活躍するヨーエ・マイが監督した、「ヴェリタス」(1919)も大作だった。デクラ・ビオスコープ社が製作した古代ローマを描いた作品であり、それまでのドイツ映画では最高の75万マルクの製作費がかけられたという。古代ローマを再現した巨大なセットを作り、ライオンも出演した。セット・デザインは若い画家・舞台装置家だったパウル・レニが担当した。レニもラインハルト門下から映画界入りした人物で、1920年代の代表的な表現主義作家となっていく。