映画評「ロイドのブロードウェイ」
原題「BUMPING INTO BROADWAY」 製作国アメリカ
製作ローリン・フィルムス 配給パテ・エクスチェンジ
監督ハル・ローチ 出演ハロルド・ロイド
劇作家を目指す青年は、コーラス・ガールを目指す隣に住む女性の家賃を肩代わりしてあげる。青年はふとしたことから闇の賭博場に行くと、そこには隣に住む女性が別の男性に連れられてきていた。そこに警察の手入れが入り、賭博場は大混乱に陥る。
ハロルド・ロイドがこの後演じていく、眼鏡をかけた平凡な男性のキャラクターによる、初の2巻物(30分弱)作品と言われる。家賃の支払いを巡る家主とのドタバタ、ロイドがマネージャーにシナリオを売り込む劇場でのドタバタ、賭博場でのドタバタという3部構成となっている。
「普通の人」というロイドのキャラクターが確立した作品となっている。チャールズ・チャップリンのような芸も、バスター・キートンのような技もこの作品にはない。その代わりに、普通の男が巻き込まれるシチュエーションを面白くしたり、周辺の人物を面白くしたりしている。
サイレント・コメディの特徴として、見た目が特徴的なキャラクターが登場するというものがある。これは、サイレント・コメディの基礎を築いたと言われるマック・セネットも同じ方針だったと言われている。ロイドは、そういったサイレント・コメディに課せられていた大きな枠から抜け出して、シナリオとアイデアと親しみやすさによるコメディを見つけ出していたことがこの作品から分かる。
非常に楽しい作品だ。ロイドが演じる親しみやすいキャラクターに、テンポのいいドタバタが加わっている。賭博場のルーレットのシーンでは、ロイドが何気なしに「13」に3回連続で置いたら、当たってしまい大金持ちになるも、13という番号から予想されるように警察の手入れによってすべてを失ってしまうというシナリオ上のおもしろさも加わっている。
アクの強い他のサイレント・コメディのキャラクターの中で、「普通」を売り物にしたというアイデアは、よく考えるとかなりすごいことのようにも思える。この作品は、それが成功していることの1つの例と言えるだろう。
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