映画評「HEARTS AND FLOWERS」

 製作国アメリ
 製作マック・セネット・コメディーズ 配給パラマウント・ピクチャーズ
 監督エドワード・クライン 脚本マック・セネット 出演ルイーズ・ファゼンダ、フォード・スターリン

 クラブで働く花売り娘に多額の遺産が入ることを知ったバンド・リーダーは、花売り娘と結婚しようとする。だが、遺産の話はデマだった。

 マック・セネットのプロダクションによる短編コメディだが、かつてのキーストン社のようなスラップスティックや登場人物の強烈なキャラクターは影を潜め、ストーリー展開と捻りの効いたギャグが散りばめられている。とはいえ、ストーリー自体にはあまり新鮮味や面白みを感じられなかった。だが、1人の男を野球のボールのように何度も投げ、棒で殴ろうとする男とが、「もっと低く!」「カーブをかけるなよ!」と注文をつけるというギャグは面白かった。

 フォード・スターリングは、かつてのキーストン社に在籍し、ヤギ髭を生やしたキャラクターを演じていたが、この作品では素顔でハンサムなバンド・リーダーを演じている。ルイーズ・ファゼンダはコメディエンヌとして人気を得ていたという。

 ちなみに、この作品には男装した女性が、別の女性にキスをするシーンがある。同性同士のキスのような同性愛を想起させるシーンは、プロダクション・コード制定後は描かれることができなくなる。当時の映画表現の自由度の高さが伺える。