映画評「ダグラス大王」

 製作国アメリカ 英語題「HIS MAJESTY THE AMERICAN」
 製作ダグラス・フェアバンクス・ピクチャーズ 配給ユナイテッド・アーティスツ
 監督・脚本ジョセフ・ヘナベリー 製作・脚本・出演ダグラス・フェアバンクス製作ハル・ローチ

 ニュー・ヨークに住むウィリアムは、消防署や警察署と一緒に救命活動に精力を費やして生きていた。そんなウィリアムは、自分のルーツである中米の国へと母親を探しに向かう。その中米の国は王制だったが、臣下たちによる革命が計画されていた。

 明るいアクション・コメディで人気を得ていたダグラス・フェアバンクスが、妻であり大スターであるメアリー・ピックフォードに加え、チャールズ・チャップリンやD・W・グリフィスといった当時の押しも押される大映画人たちと共に設立した映画配給会社ユナイテッド・アーティスツの配給第1作が、「ダグラス大王」である。

 フェアバンクスも気合が入っていたと思われ、これまでの出演作の中で最高の製作費をかけて作られている。一見した派手さはないが、町並みをスタジオの中に再現したり、群衆シーンに撮影したりと、言われてみると金がかかっているのが分かる。

 ストーリー的にも、善良で活発なアメリカ人代表とも言えるフェアバンクス演じるウィリアムが、中米の国で繰り広げられる陰謀劇を、知恵と勇気と運動神経で打ち破るというものだ。非常にストレートな活劇と言えるが、ストレート過ぎて物足りなさも感じた。さらに活劇としての楽しさも、工夫が感じられなかった。最も見どころがあったのが、冒頭でウィリアムの紹介も兼ねて繰り広げられる、火事に巻き込まれた母子を助けるシークエンスというのは少し残念だ。

 決して成就しているとは言い難いが、「ダグラス大王」は、フェアバンクスの気合いが感じられる作品だ。ストレートに正道の活劇を目指している。しかも、金をかけて。