映画評「BACK TO GOD'S COUNTRY」

 製作国カナダ
 製作カナディアン・フォトプレイ、シップマン=カーウッド・カンパニー 配給ファースト・ナショナル・エキビジターズ・サーキット、FBO
 監督デイヴィド・ハートフォード 製作・原作ジェームズ・オリバー・カーウッド 主演ネル・シップマン

 カナダの森の中で暮らす女性ドロレスは、父と夫のピーターと動物たちに囲まれて幸せに暮らしていた。そこに、犯罪者のライダルがやって来て、ドロレスを犯そうとする。邪魔をする父親は殺されてしまう。その後、都会で暮らしていたドロレスとピーターは、故郷のカナダに戻ることを決意するが、戻る船の船長を務めているのは、あのライダルだった。

 製作を担当しているシップマン=カーウッド・カンパニーは、原作を提供して製作も務めているジェームズ・オリバー・カーウッドと、主演しているネル・シップマンによる映画製作会社である。ネルは女性であり、メアリー・ピックフォードほどではないにしても、当時の映画界には女性が中心となって活躍する土俵があったことを教えてくれる。また、この作品はカナダ映画であり、カナダで作られた初期の長編映画の1つとしても知られている。

 ストーリーは、勧善懲悪の単純なものである。そこに、カナダのイメージである自然が味付けされている。熊や犬といった動物たちは、よく調教されて愛らしい姿を見せてくれる。ラストで見せる、逃げる主人公のドロレスと、追いかける悪漢のライダルの、犬ぞりによるチェイス・シーンは新鮮味がある。だが、撮影条件の難しさからか、遠景からのショットが中心であり、迫力には欠けるように感じた。また、映画内で描かれる自然はカナダのものであり、それは「神の国(GOD’S COUNTRY)」とタイトルで呼ぶほどあがめられているが、実際に撮影された場所を見ると、カナダ以外にもアメリカ各地でも撮影されている。

 主人公のドロレスが、セミ・ヌードを見せるシーンがある。川で水浴びをしているシーンがそれである。この頃、セシル・B・デミルが監督した上流階級を描いたメロドラマと同じようにタオルでうまく隠しながら、当時の男性観客を喜ばせるには十分なセックス・アピールを見せている。このシーンは、自然に囲まれた開放的な雰囲気を描こうとしたものかもしれないが、観客を呼ぶためのものであったことは確かだろう。宣伝文句が「Is the Nude Rude?(ヌードはわいせつか?)」というものであったことからも、それは伝わってくる。

 自らの製作会社を作ったドロレスを演じたネル・シップマンが、自らのヌードまで売り物にする姿には、恐れ入る。

 この映画は、さほどの新鮮味も、面白味もあるわけではないだろう。だが、ネル・シップマンという女性の力強さが伝わってくる作品である。もし、ドロレスのセミ・ヌードに少しでも興味を引かれた男性がいたとしたら、それはシップマンに完全にしてやられている。