ドイツ 「カリガリ博士」の評価

 ジョルジュ・サドゥールは「カリガリ博士」について次のように書いている。

 「カリガリは、ただ一本の映画によって創造された最初の悲劇的人物であった。彼は人間というよりも、ある精神状態であり、残忍さと不安の、幻想的なものと狂乱の混合である。この名高い映画は、今日ではドイツ精神の鍵の一つとなった」(「世界映画全史」)

 また、岡田晋は、「ドイツ映画史」の中で、次のように書いている。

 「『カリガリ博士』は『プラーグの大学生』以来、ドイツ映画が好んで取り上げた怪奇と幻想に、敗戦以後の不秩序・不安が生んだ狂気がつけ加わり、表現派の歪曲と結びつくことによって生まれでた作品なのである」

 「カリガリ博士」は話題を呼んだ。外国人にとっては、ドイツに対するエキゾティシズムとして受け入れられたとも言われている。批判もあり、主に画面と人物のギャップに対する批判が多かったという。

 アメリカを始めとして世界的に評価を得たことに自信をつけたドイツでは、つづけて表現主義映画が作られ、「カリガリスム」と呼ばれるブームとなった。第一次大戦後の世界では、どんな国でも破滅のムードが漂っていたこともブームの一因と言われる。

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