映画評「WITHIN OUR GATES」

 製作国アメリカ ミショー・ブック・アンド・フィルム・カンパニー製作・配給
 監督・製作・脚本オスカー・ミショー 出演イヴリン・プリーア、フロー・クレメンツ、ジェームズ・D・ラフィン

 アメリカ南部で黒人のための学校を運営しているが、財政難に苦しむシルビア。北部へ向かい、多くの偏見と闘いながら、白人から財政援助を求めるシルビアは、親切な老夫人と出会う。

 アメリカで初の黒人映画監督と言われるミショーの初期監督作品。黒人差別の実態を、レイプやリンチといった暴力的な側面も含めて描き出す作品である(検閲でカットを求められたという)。観客に黒人を想定していたとはいえ、ミショーの意欲が伝わって来る。

 黒人街の犯罪の描写、北部の差別意識、南部のレイプやリンチといった内容を、時にカットバックを活用して、時にフラッシュ・バックを活用して、縦横無尽に描き出している。そのため、1本の筋にまとまってはおらず、ドラマとしては盛り上がりに欠けるものの、それ以上にミショーの黒人のための映画をという気迫に押されてしまう。

 単純に黒人対白人という図式にはせずに、黒人同士の足の引っ張り合いや、北部白人の欺瞞性の描出など、細かい襞も描き出そうとしている点にも、黒人映画監督らしさが感じられる作品だ。

 面白い作品ではないかもしれない。だが、当時のアメリカ映画を見るのであれば、「国民の創生」(1915)だけではなく、この作品も見ておくべきであろう。それくらいの歴史的価値を持った作品である。