映画評「DAS WANDERNDE BILD」

[製作国]ドイツ [英語題]THE WANDERING SHADOW
[製作]マイ=フィルム [配給]ハンザ・フィルム・ヴァライ、ウーファ

[監督・脚本]フリッツ・ラング [製作]ヨーエ・マイ [脚本]テア・フォン・ハルボウ [撮影]グイド・シーベル [美術]オットー・フンテ

[出演]ミア・マイ、ハンス・マール、ルドルフ・クライン=ロッゲ、ロニ・ネスト、ハリー・フランク

 未亡人イルムガルドが汽車に乗っている。彼女は男に追われているようだ。汽車から降りた後、男から逃げて山を越えるイルムガルド。そこで出会ったのは、死んだはずの夫ゲオルグだった。彼は高名な学者で、自由恋愛論者だったゲオルグは、子どものために結婚したがったイルムガルドがゲオルグの弟と偽装結婚を挙げたことを知り、死んだように見せかけて山で隠遁生活を送っていたのだった。共に下山を進めるイルムガルドだったが、ゲオルグは山にある女神像が歩き出さない限りは山にいると言ってきかない。

 フリッツ・ラングの初期監督作品であり、この後ドイツ時代のラングの公私の相棒となるテア・フォン・ハルボウとの共同脚本作品でもある。ミステリーを感じさせる出だし、神秘的な女神像の扱い方など、後のドイツ時代のラング作品を思わせる部分も多々ある。一方で、ゲオルグの考え方や山に隠遁するようになった理由などを丁寧に説明しているため、分かりやすいものの魔法がかかっていない映画になってしまっている。

 いくらサイレント映画がトーキー映画よりも非現実的な要素を許容するとは言っても、映像が美しいと言っても、イルムガルドが子どもを抱いて歩く姿を、女神像が歩いているように見えるという展開は、見ていて恥ずかしくなるくらいで、やり過ぎな気もする。