映画評「DAUGHTER OF THE NIGHT」

 ドイツ語題「DER TANZ AUF DEM VULKAN LEDERSTRUMPF」 製作国ドイツ
 リヒャルト・アイヒベルク・フィルム・GmbH製作 Central-Film-Vertriebs GmbH配給
 監督・製作リヒャルト・アイヒベルク 出演ベラ・ルゴシ


 舞台はパリ。謎のロシア人女性シンガーを中心に、ロシア革命によってパリに亡命してきていた旧ロシア貴族に、フランスに潜む革命軍側の人々が絡み合う。

 元々は2部作の作品だが、私が見たのは再編集されて1本にまとめられた短縮版である。そのためか、複雑なストーリーを追うのに精一杯の印象を受けた。

 当時ルゴシはドイツ映画に出演していた。この作品のルゴシは主役ではないが、アンサンブル・キャストの一員といったところだ。後年のホラー映画のイメージはなく、ハンサムな紳士を演じている。当時すでにルゴシは30代後半で、「魔人ドラキュラ」(1931)を演じたときは50歳近かったのだ。遅咲き中の遅咲きと言えるが、この映画のハンサムな紳士ぶりを見ると、「魔人ドラキュラ」に気品を加えるにはルゴシが必要だったのだろうなと思わせる。

 この作品だけを見ると、正直面白くない。ロシア革命とパリへの亡命ロシア人という題材は、当時の状況を考えると非常に野心的だと思われるが、とにかく面白くない。カメラは基本的に固定で工夫に欠け、字幕がないとストーリーは分からないだろう。また、アクションに欠けるため、ルゴシのダンディさは伝わってくるものの、演技の魅力を感じるまでにはつながらない。