映画評「ナット」

 原題「THE NUT」 製作国アメリ
 ダグラス・フェアバンクス・ピクチャーズ製作 ユナイテッド・アーティスツ配給
 監督セオドア・リード 製作・脚本・出演ダグラス・フェアバンクス 出演マーガレット・ド・ラ・モット

 発明家のジャクソンは、孤児たちを援助する活動をしているエストレルに恋をしている。エストレルを喜ばせようと花火を使った仕掛けをパーティで披露したジャクソンだったが、失敗してパーティを大混乱に陥らせてしまい、エストレルも離れてしまう。それでもあきらめないジャクソンは次の手を考え・・・。

 フェアバンクスによる押しつけがましい主張が見られた「臆病者」(1920)とは異なり、「ナット」には愛する女性を手に入れたいという純粋な行動の楽しさが見られる。エンターテイナーのフェアバンクス演じるチャーリーは、パーティではリンカーンやグラント将軍など様々な有名人に扮してみせる(これには裏があるのだが)。このシーンではチャールズ・チャップリンが、チャップリンの模倣者を模倣した役柄でカメオ出演している。他にも、蝋人形を使ったギャグなど工夫が凝らされ、随所に見られるフェアバンクスの身体能力の高さも楽しい。

 「ナット」はこの後のハロルド・ロイドの作品を思わせる。さわやかで、ギャグに富み、アクションもあり、楽しい。フェアバンクスはこの後、「奇傑ゾロ」(1921)を作り、ヒーローものの主人公として活躍していく。ロイドは見事に、フェアバンクスが転向した後の穴を埋めるかのように、人気を得ていくことになる。