映画評「愛の燈明」

 原題「THE LOVE LIGHT」 製作国アメリ
 メアリー・ピックフォード・カンパニー製作 ユナイテッド・アーティスツ配給
 監督・脚本フランシス・マリオン 製作・出演メアリー・ピックフォード

 あるイタリアの田舎町。アンジェラは、仲の良い兄弟や彼女を愛するジョヴァンニらに囲まれ幸せに暮らしていた。第一次大戦が勃発。兄弟やジョヴァンニは出征する。ある日、アンジェラは浜辺に倒れていたアメリカ人のジョゼフを助ける。

 多くのメアリー・ピックフォード作品の脚本を担当し、ピックフォードの親友でもあったフランシス・マリオンが監督も担当した作品である。マリオンが実際にイタリアで聞いた話を元にして映画化を思い立ったこともあり、マリオンにとってはチャレンジングな作品だったことだろう。さらに、少女役からの脱皮を常に模索していたピックフォードにとっても、大人の女性を演じるまたとない機会だったことだろう。

 第一次大戦が引き起こした悲劇を、アンジェラという1人の女性に焦点を当てて作られている。まだ終結してから3年ほど経過していなかった悲劇は、激しいダメージを受けていなかった戦勝国アメリカだからこそ作ることができたのかもしれない。

 家族の出征と死、スパイとの恋愛といった戦時中ならではの要素を扱っていながら、映画はピックフォード作品としての限界を見せる。やはりピックフォード作品には幸せな結末が必要だし、そのためには子供を助けるというピックフォードに万人が同情できる仕掛けが必要だったのだろう。だが、映画が最も盛り上がる部分、家に火をつけてまで子供を助けようとするピックフォードの姿には胸打たれるものがあるとしても、第一次大戦が引き起こした悲劇と切り離しても成立することには個人的に抵抗があった。

 ピックフォードを知り尽くしていたであろうフランシス・マリオンは、同時に観客がピックフォードに求めるものも知り尽くしていただろう。そんなマリオンが監督・脚本を担当した「愛の燈明」が、野心的な製作にも関わらず失敗してしまっているとすれば、それはマリオンが監督・脚本を担当したからかもしれない。もしも、ピックフォードのスター・イメージにこだわらない人物が監督・脚本を担当していたら、ピックフォードが主演する悲劇の代表作となっていたかもしれない。

 「愛の燈明」は、ピックフォード=マリオンの名コンビだからこそ作られた作品でもあり、名コンビだからこそ作品としては失敗に終わったのかもしれない。そうだとすると、映画自体よりも悲劇である。