映画評「THE BAKERY」

 製作国アメリ
 ラリー・シーモン・プロダクションズ製作 ヴァイタグラフ・カンパニー・オブ・アメリカ製作・配給
 監督・製作・脚本・出演ラリー・シーモン 監督・脚本ノーマン・タウログ 出演オリヴァー・ハーディ

 舞台はパン屋。従業員のラリーは、店長や客たちとドタバタを繰り広げる。

 粉があるパン屋は、サイト・ギャグが売り物のサイレント時代のコメディではよく舞台になる。チャールズ・チャップリンバスター・キートン出演作にも、パン屋を舞台にしたものがある。

 前半までは、これといった特徴のない典型的なスラップスティック・コメディだ。見どころは後半にある。

 2階にいる店長を追い詰めるために、ラリーは巨大なハシゴを使って庭から登ろうとする。だが、店長がハシゴを掴んだため、ハシゴはバランスを失って傾く。だがハシゴはそのまま倒れず、塀が支点の役割を果たして、シーソーのようになる。そこに車が通りハシゴの先に掴まった店長が轢かれそうになるのだが、ちょうどシーソーが上になった状態で車が通るために助かる。さらにバランスを失ったハシゴは立ち上がっては倒れるのだが、そのたびに支点となるものに助けられて、転がっていくのだ。この大がかりなスタントの魅力を言葉で表すのは難しいのだが、一見の価値がある。

 実際には様々なショットを編集でつないで見せているのだが、編集という映画ならではの武器を使って、これほど大がかりなスタントを見せてくれる作品は、同時期の作品では珍しい。

 スタント自体はシーモンが行っていないかもしれないが、そんなことはあまり問題ではない。シーモン映画が同時期の他のスラップスティック・コメディとは異なる魅力の1つ、大がかりなスタントの魅力がここにはある。