映画評「オセロ」

 製作国ドイツ 原題「OTHELLO」 ヴェルナー映画協会製作 ウーファ配給
 監督・脚本ディミトリー・ブコエツキー 出演エミール・ヤニングス、ヴェルナー・クラウス

 ウィリアム・シェイクスピアによる4大悲劇の1つの映画化。ボーア人のオセロは、白人の美しいデズデモーナと結婚する。だが、オセロが自分ではなくキャシオーを昇進させたことを妬んだイアーゴは、デズデモーナとキャシオーが関係を持っているという嘘をオセロに吹き込む。

 エミール・ヤニングスとヴェルナー・クラウスという、サイレント時代のドイツを代表する2人がオセロとイアーゴを演じた作品である。時折群衆シーンもあるものの、基本的には舞台的な演出に終始している。優れた軍人でありながら、イアーゴの嘘に心を乱されていくオセロの弱さをヤニングスは堂々とした演技で表現している。一方でクラウスは、ピッチリとした衣服や胡散臭い口髭などの外見に加え、これ見よがしな表情や仕草で狡猾で姑息なイアーゴを演じ上げている。

 見ているものの心を締め付けるような物語の展開は、シェイクスピア(および原典である「百物語」)の持つ強さと言えるが、サイレント映画においては映像で見せることが必要である。ヤニングスとクラウスが見事な演技を見せているものの、物足りなさを感じてしまったのは、2人のパントマイムに頼りすぎているからかもしれない。