映画評「戦争の犬」

製作国アメリカ 原題「DOGS OF WAR」 ハル・ローチ・ステュディオズ製作 パテ・エクスチェンジ配給

監督ロバート・F・マッゴーワン 製作・原案ハル・ローチ 出演ジャッキー・コンドン、ミッキー・ダニエルズ

 ハル・ローチが生み出し、人気を呼んだ「ちびっ子ギャング」シリーズの1つ。トマトを使った戦争ごっこをしていたちびっ子たちだったが、途中から映画撮影所に潜入してトラブルを引き起こす。

 それまで、アクの強いコメディアンたちの独壇場だったサイレント・コメディの世界に、それぞれ特徴があるものの、普通の子供たちを登場させたところにローチの目の確かさがある。ローチはハロルド・ロイド作品のプロデューサーとしても知られているが、ロイドが普通の中流階級の男を演じてコメディアンとして人気を得ていったことを考えると、この共通点は興味深い。ちなみに、そのロイドはこの作品の中にカメオ出演している。

 戦争ごっこと撮影所潜入の二部構成になっている。戦争ごっこは、子どもたちだけでは実際はこうはいかないと思わせるほど凝っている。塹壕、ヘルメットなどの装備、投石機に加えて、最後には手作りの戦車まで登場するのだ。だが、現実を超えたシュールさまでには至っておらず、子どもたちの遊びを大げさにしている範囲で収めている点が絶妙である。

 撮影所潜入は、当時の多くのサイレント・コメディでも描かれている。映画好きは、当然映画の舞台裏にも興味があるわけなので、多く描かれるのも当然だ。ここでも、子どもたちが無邪気に撮影の邪魔をする楽しさが伝わって来る。

 ファリーナが走る姿の可愛らしさは、「ちびっ子ギャング」の楽しさを最も伝えている。子どもたちが快活に楽しむ姿に、ちょっと調味料を加えてあげるだけで楽しい映画ができることに気づいて実践したハル・ローチは偉い。