映画評「アリスの不思議の国」

※ネタバレが含まれている場合があります

[製作国]アメリカ [原題]ALICE'S WONDERLAND
[製作]ラフ=オー=グラム・フィルムズ  [配給]マーガレット・J・ウィンクラー

[監督・製作・脚本・出演]ウォルト・ディズニー [撮影・作画]ルドルフ・アイジング、アブ・アイワーク
[作画]ヒュー・ハーマン、カーマン・マックスウェル [出演]ヴァージニア・デイヴィス

 アニメーション・スタジオに遊びに行ったアリスは、楽しい気持ちのままベッドに入り、夢を見る。夢の中でアリスは、アニメの世界の中で動物たちの村へ行くのだった。

 ミッキー・マウスを生み出す前のウォルト・ディズニーは、実写とアニメを組み合わせた「アリス」シリーズを製作していた。「アリスの不思議の国」は、「アリス」シリーズの第1作である。当時、実写とアニメを組みわせた手法は、ライバルとも言えるフライシャー兄弟を始めとして多く使われていたが、アニメの世界の中に少女アリスを登場させるという点において、他とは一線を画していた。

 アリスの動きは制限され、いかにも「合成しました」という感じが強いものの、そんなことはどうでも良い。問題は、アニメの世界の中に少女を迷いこませるという発想だ。これこそ、将来的にディズニー・ランドへと結びつくものだ。アニメの世界の中で、列車に乗ってやって来るアリスを、動物たちは大歓迎する。まるでディズニー・ランドで、来場する子供たちを待ち受けるキャラクターたちのようではないか!

 ディズニーが、最初から理想の世界を描いていたのか、アニメを製作していくうちに理想の世界が形作られていったのかは分からない。だが、最初期に製作した作品に、後の夢の結晶の萌芽が見えること。そのことが何よりも、見ていて嬉しくなってくる。