映画評「THE HANSOM CABMAN」

※ネタバレが含まれている場合があります

[製作国]アメリカ [製作]マック・セネット・コメディーズ [配給]パテ・エクスチェンジ

[監督]ハリー・エドワーズ [製作]マック・セネット [撮影]リー・デイヴィス、ヴァーノン・L・ウォーカー [編集]ウィリアム・ホーンベック

[出演]ハリー・ラングドン、マーセリン・デイ、シャーロット・ミノウ、アンディ・クライド、マデリン・ハーロック

 結婚式当日。前夜のパーティで頭が痛いハリーが目を覚ますと、そこにはパーティで結婚をしたという女性が。婚約者の両親は怒り、ハリーは留置所に入れられる。ハリーの資産を狙った狂言ということが分かったが、ハリーは留置所を脱走していた。

 非常にゆったりとした流れが特徴の作品だ。自分と結婚したと言い張る女性と殴り合いにあるシーンも、言葉で書くと殺伐としているが、非常にゆったりとしている。しまいには、女性に殴られたハリーが、自分から歩いてベッドに入って気絶してしまう。その後に続く、ハリーと本来の結婚相手の母親とのやり取りも、自分から銃を母親に渡してあげる。さらには、裁判所でも留置所に入れられることになったハリーは、職員に自ら自分の襟首をつかませる。

 1つ1つのシーンに非常に余裕が感じられる。それは、途中に挟まれる、幻覚を見ている囚人とのやり取りのギャグに象徴的に現れている。ストーリーとは関係ないものの、囚人とともに(囚人を演じるアンディ・クライドの演技も見事)実際はそこに存在しない怪物(?)を倒すという見事なパントマイムを見せてくれる。

 余裕は主人公ハリーのキャラクターにも現れている。何にも動じないキャラクターは、少し頭が悪いのではと思わせるくらいだ。終盤では、自動車の上に立ったハリーが、本人が気づかないうちに、次から次へと車が替わっていくシーンを早いテンポで見せてくれる。ここでも、ハリーの余裕(頭の悪さ?)と見事なスタントが融合している。

 この作品は、作品全体に漂う、ゆったりとした余裕が魅力的な作品だ。それは、他のスラップスティック・コメディにはない魅力である。

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