映画評「DIE FINANZEN DES GROßHERZOGS」

※ネタバレが含まれている場合があります

[製作国]ドイツ [原題]THE FINANCES OF THE GRAND DUKE [製作・配給]ウーファ

[監督]F・W・ムルナウ  [製作]エーリッヒ・ポマー [原作]フランク・ヘラー [脚本]テア・フォン・ハルボウ [撮影]カール・フロイント、フランツ・プラナー [美術]エーリッヒ・ツェルヴォンスキー、ロフス・グリーゼ

[出演]マディ・クリスチャンズ、ハリー・リートケ

 地中海に浮かぶ島にあるアバコ国は財政が逼迫していた。裕福な外国の王女と結婚することで何とか凌ごうとするアバコ国の君主だったが、国を離れているうちに乗っ取りを企てる男によって革命を起こされてしまう。

 同年に「最後の人」(1924)を発表したムルナウが監督したコメディである。力作「ファントム」(1922)や怪作「吸血鬼ノスフェラトゥ」(1922)と「最後の人」に挟まれており、知名度も低い作品である。だが、その理由は明確だ。この作品はコメディなのだ。

 ムルナウの代表作にはどれも重厚感がともなう。脚本を担当したハルボウにしても、夫でもあったフリッツ・ラングと組んだ「ドクトル・マブゼ」(1922)や「メトロポリス」(1927)のような重厚感がある作品の方が、今でも名前が残っている。

 ハルボウの脚本は開き直ったかのように字幕が多く、ムルナウの演出も開き直ったかのように字幕をそのまま使用している。登場人物が多くて複雑なためと思われるが、その多くの登場人物がコメディとしての面白さに寄与していないのが寂しい。

 見ていて飽きない作品ではある。だが、ムルナウとハルボウには飽きない以上のものを求めてしまう。2人の関わった作品には、もっと素晴らしい作品がたくさんある。