映画評「ミカエル」

※ネタバレが含まれている場合があります

カール・Th・ドライヤー コレクション/ クリティカル・エディション  ミカエル [DVD]

[製作国]ドイツ [原題]MICHAEL [製作・配給]ウーファ

[監督・脚本]カール・ドライヤー [製作]エーリッヒ・ポマー [原作]ヘアマン・バング [脚本]テア・フォン・ハルボウ [撮影]カール・フロイント、ルドルフ・マテ

[出演]ベンヤミン・クリステンセン、ウォルター・スレザック、ノラ・グレゴール、アレクサンダー・ムルスキー

 画家のゾレは、モデルとして雇った青年ミカエルを養子としている。ゾレはザミコフ伯爵夫人の肖像画を描くことになる。ミカエルと伯爵夫人は愛し合うようになり、ミカエルはゾレの元を訪れなくなるばかりか、ミカエルがモデルのゾレが描いた絵画を売り払ってしまう。

 当時ドイツで映画を撮っていたドライヤーによる作品で、同性愛者であるゾレの葛藤を描いた作品である。自身の財産を食いつぶしていくミカエルをどうしても突き放せないゾレの姿は、愛に溺れてしまった人間の哀しさを感じさせる。そんなゾレが最後の最後で、俗世とはかけ離れた誰も知らないような場所を自らの埋葬場所に指定する姿は、あまりにも孤独で、あまりにも哀しい。

 ゾレを演じているのは、「魔女」(1921)の監督としても知られるベンヤミン・クリステンセン。一見強固な意志の持ち主のように見せながら、ミカエルへの思いが断ち切れないゾレを存在感たっぷりに演じてみせる。

 当時のドイツ映画の主流だった室内劇映画の趣も持った作品であり、絵画や彫刻が飾られた画家の邸宅らしいセットや、一見変わったゾレの衣装などにも特徴がある。ドライヤーの演出も、時に背景を浮き上がらせてみせるなど、照明に凝ったものとなっている。