映画評「BODY AND SOUL」

※ネタバレが含まれている場合があります

[製作国]アメリカ  [製作・配給]ミショー・フィルム

[監督・製作・原作・脚本]オスカー・ミショー

[出演]ポール・ロブソン、メルセデス・ギルバート、ジュリア・テレサ・ラッセル、マーシャル・ロジャース

 マーサは娘のイザベルが連れてきた恋人シルヴェスターとの結婚を、彼が貧しいという理由で許さない。代わりに、牧師でシルヴェスターの兄であるイザイアがお気に入りだった。だが、イザベルはイザイアを怖がっていた。

 黒人映画の父と言われるオスカー・ミショーの作品。悲惨な内容は検閲に引っかかり、急遽ラストのハッピー・エンドが付け加えられたという。また、後に「ショウ・ボート」(1936)で「オール・マン・リバー」を歌ったことでも有名な黒人俳優ポール・ロブソンのデビュー作でもある。

 黒人が作った、黒人を対象とした作品でありながら、好色で偽善的で酒飲みの黒人の男イザイアをじっくり描いている。演じているのはポール・ロブソンで、ロブソンは優しく紳士的なイザイアの兄シルヴェスターも演じている。イザイアを演じている時はハイテンションで、アル中からか常に小刻みに動いている。一方、シルヴェスターを演じている時は慈愛に満ちた表情や優雅な動きを見せてくれる。ロブソンの演技が確かなことは、この作品をみるだけで分かる。

 後半のイザイアの説教を聞いた人々のテンションがどんどん上がっていき、やがて恍惚状態になるシーンはトーキーで見てみたい迫力だ。ミショーの演出は決して素晴らしいとはいえないものの、このシーンは別だ。

 1920年代に作られた、黒人による黒人のための作品として歴史的な価値がある一方で、ポール・ロブソンというパワフルさと繊細さを兼ね備えた役者の素晴らしさを感じられる作品でもある。