グレタ・ガルボのアメリカ進出 「イバニエスの激流」

 モーリッツ・スティルレルと共に、スウェーデンからハリウッドへやって来たグレタ・ガルボは、「イバニエスの激流」(1926)に出演している。スペインの片田舎に住む貧しい歌手が有名なオペラ歌手になるというストーリーに恋愛が絡む作品である。

 ガルボが注目された作品であるが、MGMは、ガルボの使い方がまだわからなかったため、様々なキャラクターを演じさせたという。そのため、芸術性や真実性や一貫性が犠牲にされ、ガルボの後見人ともいえるスティルレルは激怒したとういう。ガルボスウェーデンでは普通のタイプだったが、ハリウッドでは新しいタイプだった。この点について、アレグザンダー・ウォーカーは、「スターダム」の中で次のように書いている。

 「批評家たちがある女優を古いタイプのスターと比較してみることを余儀なくされたとすれば、それは新しいタイプのスターの出現を示す確かな兆候である。比較が行われたということそれ自体が彼女の衝撃力の証明なのであり、彼女の個別性の証拠はその後間もなくして現れてくるだろう」

 以後ガルボは伝説を作り上げ、「この世のものではない聖女(divine)」と呼ばれていく。

スターダム―ハリウッド現象の光と影

スターダム―ハリウッド現象の光と影