朝鮮 抗日精神を描いた傑作「アリラン」

 初期の朝鮮映画は古典小説原作のメロドラマや新派などの演劇の映画化がほとんどだった。娯楽的傾向が強かったが、興行的に成功する作品はまれで、映画界は不況にあえいでいた。

 そんな中で作られた作品が「アリラン」(1926)である。朝鮮映画史に残る傑作で、興行的にも爆発的なヒットを飛ばした作品である。

 「アリラン」は、ユン・バクナム監督の「雲英伝」(1925)で俳優としてデビューしたナ・ウンギョが製作・監督・脚本・主演を担当した作品である。日本の警官の拷問で精神に異常をきたした青年が、妹をレイプしようとした親日派の男を殺し、「アリラン」を歌いながら逮捕されるという内容で、抗日精神を描いた社会性・芸術性が強い作品だったという。

 ちなみに、サイレント時代の朝鮮映画は、日本と同じように弁士が解説を行った。ソ・サンホ、ウ・ジョンシク、チェ・ジョンデなどが評判の高かった弁士と言われ、特にソ・トンホ解説の「アリラン」は天下一品と言われていたという。