ドイツ ワルター・ルットマン「伯林−大都会交響楽」

 ワルター・ルットマンは「伯林−大都会交響楽」(1927)を監督している。カール・マイヤーとカール・フロイントが原作を担当した。ソ連のジガ・ヴェルトフの理論に従い、大都会ベルリンの1日を盗み撮り中心に撮影し、膨大なフィルムを視覚的映像構成で描いた作品であり、純粋映画の系列の作品である。

 純粋映画の代表的作品である一方で、ドキュメンタリー映画ではない。岡田晋は「ドイツ映画史」の中で、「現実にカメラを向けながら、彼の求めるのは現実のフォルムであり、フォルムの連続がつくりだす視覚的リズムであった」「現実のベルリンが少しも感じられない」と述べている。

 さらに岡田は、ルットマンにドイツ・リアリズムの限界や特質を見出している。

 「現実を取り上げながら、現実の本質に迫らない。彼は現実を、一つの形式の素材として見る。そのために人間の生きた生活は脱落し、影のようなイメージのフィルム、ディテールに細分化された物体の質感だけが強調される」