エチエンヌ・マレー(3)

 マレーは、1888年にロール式のペーパーフィルムを用いた撮影機での撮影に成功した。だが、フィルムの中心は一定ではなく、上下にズレていた。マレーは、この撮影されたフィルムのズレを欠点とは思っていなかった。マレーの興味はあくまでも動物の動きの分析にあったため、映写してみる必要性をあまり感じていなかったのだ。普通に見ることができるものを見てどうするの?ということらしい。後にマレイの弟子である人物が、高速度撮影と低速度撮影(スローと、コマ落とし)を伴う場合にのみ映写は興味あるものになると語っていることからも、マレー一派がフィルムの映写にさほど興味を持っていなかったことがわかる。
 そんなマレーも1896年には映写用の機械の特許も取るが、それが実際に動くようになり、映写を伴う講演を行うことが出来たのは、リュミエールらによる映写式の映像が世界に広がった後の1899年のことだった。