映画の興行的・娯楽的祖先(1)

 映画の興行的・娯楽的祖先ということで考えると、それは無数にある。「物語を人に伝える」ということで考えると、舞台や小説はもちろんのこと、オペラに詩、音楽に絵画など、切りがない。人を楽しませるものと考えると、マジックなども含まれてくるだろう。
 いろいろな本を読んでいくと、映画の興行的・娯楽的祖先というと、映画と同じように光学的な技術を使ったもの(影絵など)や残像を利用したもの(パラパラマンガと同じ原理の玩具など)が祖先として挙げられることが多い。
 確かに、これらのものは映画が誕生したときの映画機械の特性に通じるものを備えていたという点で祖先といえる。だが、後に映画が「物語を語るもの」として繁栄していく過程においては、舞台や小説などの物語を語るものが映画と密接な関係を築き上げていく。
 映画が誕生した当初は、まだ物語を語っていなかったことを考え、とりあえずは映画機械の特性に通じるものを備えていたものを取り上げる。他の祖先たちと映画の関わりについては、映画が物語を語るようになる過程で自然と触れられていく事になるだろう。