映画の興行的・娯楽的祖先(2) 影絵

 「人形や型紙などに光を当て、スクリーン上の影が演じる世界を楽しむ芝居や遊戯」(「映画史を学ぶクリティカルワーズ」*1より)

 中国、トルコ、ジャワ島などでは古来から楽しまれてきた。19世紀以降はヨーロッパでも人気を博すようになり、多額の費用をかけた大作も作られた。また、内容ものちの「イントレランス」「クォ・ヴァヂス」「カビリア」といった作品を思わせる壮大な史劇も作られたという。このような作品を見る客は上流階級であった。

 大勢の観客を前にして、実際の人間や絵や写真そのものではなく、光学技術を用いた「影」を見るという点で映画と似ている。また、上演時に暗くする必要があるというのも、映画館と共通するものがある。映画館のような非日常性を楽しむという行為は影絵の頃からあったということだろう。

 映画誕生当時はストーリーがなかったわけだが、ストーリーの持つ影絵が人気を得ていたということは、映画がストーリーを持って繁栄することは約束されていたといえるのかもしれない。

*1:

映画史を学ぶクリティカル・ワーズ

映画史を学ぶクリティカル・ワーズ