映画の興行的・娯楽的祖先(6) ジオラマ

 写真の開発者として知られるジャック・ダゲールが開発。パノラマに複雑な照明効果を加えたもの。半透明のイメージの上に前後からライトを当て、シャッターとブラインドで、照明と変貌効果を出した。昼と夜の変化などをつけたりもした。当時起こった大火災や大地震の様子といったニュース性の高いものを題材として扱った。

 パノラマもジオラマも説明を読んだり、写真を見たりするとおもしろそうなのだ。映画とは無関係に、一度は見てみたいと思わされる。

 パノラマの項でも書いたが、有名な光景や有名な出来事をビジュアルで知りたいという欲求に、ジオラマやパノラマは応えていた。後に映画は、これらに代わってその欲求を満たしてくれるのだが、違う点がある。

 パノラマやジオラマは構造上、独特で巨大な設備が必要だし、製作にも大きな手間ひまがかかる。その上、出来上がった作品は、基本的に一つの場所でしか使えない(コピーが難しい)。それに対し、映画はパノラマやジオラマほど独特な設備は必要としない。スクリーンがあればよい。また、フィルムをネガからポジにするという方法で大量のコピーも可能である。その結果、映画は全世界の津々浦々にまで浸透していく事になる。

 パノラマやジオラマを知ることで、映画が繁栄した理由の一端も知ることが出来るのではないだろうか。