映画の興行的・娯楽的祖先(7) ゾーイトロープ プラクシノスコープ

 ゾーイトロープはフェナキスティスコープの円盤と鏡の代わりにドラムを使ったもの。回転するドラムのスリットとスリットの間に生じる瞬間の闇がシャッターの役割を演じて、残像現象をもたらし、内側に書かれた絵が動いて見えるという仕組み。

 見られる映像の単純さなどはフェナキスティスコープと変わらない。もちろん、物語を語る機能は持っていない。

 「ゾーイトロープ」は、フランシス・F・コッポラがかつて設立した製作プロダクション「アメリカン・ゾーイトロープ」社に名前が使われている。映画以前の映像を見せる機械の名前をつけたところに、当時のコッポラの映画界を刷新してやろうという野心が感じられる。

 ゾーイトロープの原理を応用したものとしてドイツで開発されたものに、「エレクトロタキスコープ」がある。ドイツで写真学を学び、プロシア軍の写真技師でもあったオットマール・アンシュッツが、陸軍省と文部省の後援で1886年の夏に開発したものだ。馬の走る様子の連続写真14枚から20枚を大きな円盤に貼り、円盤を回転させつつ小窓を通して映像として見せた。1887年3月に公開され、1890年には24枚からなる数種類の作品(円盤)が発表されたという。

 エミール・レイノーという人物が、ゾーイトロープを改良しプリズムを使ったプラクシノスコープを開発。プラクシノスコープはさらに改良され、スクリーンに投影されるようになる。レイノーはこの映写式のプラクシノスコープを使って、多くの人にアニメーションを見せていく事になる。


ゾーイトロープの写真は下記サイトで見ることが出来る。
運動の快楽と死――表現媒体としてのアニメーション……篠儀直子