リュミエール社作品集(55)
「ギース候の暗殺」(1897)
歴史上の出来事を再現した舞台を撮影。
リュミエール社の暗殺ものは正直説明されないと区別がつかないだろう。
それは、暗殺の歴史的背景を日本人である私があまりよく知らないというのもあるだろうが、それ以前に、描かれ方や背景、演技などがあまりにも似通っているからというのもあると思う。
ナレーションによると、マラーやロベスピエールが暗殺されるのと同じセットで撮影されているとのこと。やっぱり。
「アルザス=ロレーヌ通り」(1896)
トゥールーズ。通りを行き交う人や馬車の様子を撮影。
よく見ると、道路にレールが引かれていて、馬車がその上を走っている。市電の馬車版といったところだ。他の作品でも見ることが出来たのかもしれないが、まったく気づかなかった。新しい発見。
ナレーションによるとこの作品を地元で上映した際、日常の風景なので受けなかったという。私が読んだ本では、興行の際に現地で撮影したフィルムが呼び物となっていたと聞いたことがあるのだが、それとこの作品についての話は矛盾している。単純にその場所によって事情が違うというだけの話かもしれないが。
「洗濯女」
洗濯をする2組の母娘の様子を撮影。
始まってすぐに木箱に書かれた「SUNLIGHT SEIFE」の文字が目に入ってきたと思ったら、この会社の広告なのだという。世界初の広告映画ということだ。途中で子供に指示を与える人物の姿まで映っている。
思えば、通りの看板に書かれたものはあっても、この作品のようにあからさまに目に文字が入ってくる作品はなかった。その意味でも効果はあったのかもしれない。
「第八大隊の縦列行進」(1897)
スイス・ローザンヌ。行進する兵士たちの様子を撮影。
この作品にも、途中でさりげなく「SUNLIGHT」と書かれた看板を積んだ車を男が持ってきて、画面に映るようにしている。
しかし、やっぱり不自然で、看板以外が他のこの手のリュミエール社の作品と同じように、情景を撮影したものなのに、急にあまりにも人工的なものがさし込まれているという感じがする。
もし、今これをやったらその企業の品位が問われることだろうが、映像自体が生まれたばかりの当時は、そんなことはなかったのだろう。
とはいえ、今でも同じような方法は使われている。劇映画の中にさりげなくスポンサー企業の商品を混ぜたりといった手法は広告業界では「プロダクト・プレースメント」と呼ばれている。
「ベルン:シャム王の到着」(1897)
スイス・ベルン。現在のタイの国王が到着し、行進する様子を撮影。
他でもよく見る類の作品だが、ナレーションによると、ここで「SUNLIGHT」の看板が設置されていたのだという。完成した作品には映っていないのだが。