リュミエール社作品集 まとめ(3)

 エジソン社のキネトスコープ用の作品が、ブラック・マライアと呼ばれる撮影所の中で撮影されたものであったために、屋外に飛び出して撮影されたリュミエール社の作品は、確かにそれまでのキネトスコープの作品と比べると、リアリズムを感じる。だが、よく見ると、演出や作為はいたるところに感じられる。

 リュミエール社の作品の種類は多岐に渡るので、すべての作品をまとめて語るのは難しい。そこでいくつかに分けて考えてみたい。(私が見た)リュミエール社の作品は、下記のように分類できる。

・フランス人の日常の光景
・フランスを始めとした各地の町並みの光景
・ダンス、手品、アクロバット、演劇などの出し物を撮影したもの
・公式行事、イベントを撮影したもの
・コント
・各地の珍しい光景


「フランス人の日常の光景」

 「赤ん坊の食事」「海水浴」などがあたる。ここに分類される作品は、ルイ・リュミエールが撮影したものが多く、登場するのもリュミエール家の人々であるものが多い。ここで注意すべき点は、リュミエール家の人々は、金持ちだったという点だろう。決して、フランスの一般的な家庭の様子を撮影したものではない。


「フランスを始めとした各地の町並みの光景」

 都市の大通りや広場などを撮影した作品も多い。建物や乗り物、行き交う人々の様子などを見ること出来る。撮影されている人々がおそらく全員この世にはいないであろうことを考えると、ヘンな気持ちになってくる。


「ダンス、舞台などでの出し物を撮影したもの」

 映画が興行という形を取っていたために、他の興行による見世物を撮影した作品を上映するというのは当然の発想だったようだ。エジソン社がキネトスコープ用に撮影した作品でも、この種類の作品は多い。当時有名だった「蛇踊り」は両社で作品が撮影されている。時折出し物自体がおもしろいものがあって、楽しませてくれる。


「公式行事、イベントを撮影したもの」

 この種類の作品がもっともリアリズムを感じさせる。行事やイベントそのものに演出を加えることが困難だったからだろう。しかし、行事やイベントの主催者側は、撮影よりも行事の遂行の方が当然重要なので、カメラの位置などをあまり考えてくれなかったようで、被写体が小さすぎたり、あっという間にカメラの前を通りすぎてしまったりという作品もあった。


「コント」

 以外と多いのが、この種類の作品。代表作品は「水をかけられた撒水夫」。御者が眠っている隙に、馬車の馬を木馬と取り換えるなど、他愛もないものだが、過剰な演技が逆におもしろかったりもする。


「各地の珍しい光景」

 今のようにテレビがなければ、もちろんインターネットなどもなかった時代である。映像で各地の珍しい光景が見られるというのは十分需要があったのだろう。ヨーロッパ全土を始め、中東や日本などの作品がある。また、当時のフランスの植民地だったアルジェリアベトナムの作品もある。