リュミエール社が撮影した日本(2)

 日本を撮影したリュミエール社の作品を見るとき、注意しなければならない点がある。それは、演出が施されているという点だ。リュミエール社の作品はドキュメンタリーであると一般的な認識は必ずしも正確ではない。日本に限らず、他の国で撮影されたフィルムも、フランス国内で撮影されたフィルムも、演出されていると思われる作品は多々ある。ただ、日本で撮影されたフィルムの演出は、単におもしろいシーンを撮影したいという意思のほかに、フランス人のイメージに合った日本人像を撮影したいという意思が感じられると指摘されている(「映画伝来」)。

 例えば、「田に水を送る水車」という作品では、農民が裸(ふんどしのみ)で作業を行っている。しかし、当時の日本では裸で農作業を行うという風習はなく、日本人は裸でいるものという概念に従って撮影されたものではないかと指摘されている(「映画伝来」)。

映画伝来―シネマトグラフと〈明治の日本〉