パテ社のさらなる伸張

 フランスのパテ社はこの年も様々なジャンルの映画を製作している。

 再現された実写映画の分野では、ロシア革命が題材である「ロシアにおける諸事件」(1905)や、「戦艦ポチョムキン」の題材ともなった事件を映画化した「ロシア革命オデッサ事件」(1905)を製作した。だが、この頃から本物のニュース映画が多く登場するようになり、再現された実写映画の分野は放棄されていくことになる。

 トリック映画の分野では、ガストン・ヴェルが引き続き演出にあたっており、「天井のワルツ」「月を熱愛する男」(ともに1905)といった作品が製作されている。

 社会問題を扱ったリアリスティックな作品の分野では、プロレタリアを描いた作品である「炭坑地帯で」(1905)や「徒刑場で」(1905)といった作品が製作された。

 また追っかけ映画、喜劇映画の分野でも、「夫一人に妻十人」「小さな放浪者たち」「自転車泥棒」といった作品が作られている。これらの作品は他社の作品の剽窃であったとされている。また、後にフランス一のコメディアンとなるマックス・ランデーがパテ社からデビューしている。

 ジョルジュ・メリエスが牽引していた夢幻劇の分野でも、「親指太郎」という作品が製作されている。この作品は、舞台を撮影するスタイルのメリエスに対して、ロケで撮影されていた。

 このように、パテ社は伸張を続けており、シャルル・パテは「映画は明日の新聞であり、学校であり、劇場である」と高らかと宣言するほどだった。