ジョルジュ・メリエスの凋落の始まり

 映画界をトリック映画で豊かにしてきたジョルジュ・メリエスは、この年第二スタジオを建設している。それだけではなく、大量の衣装を買い込み、日光の弱さを補うためにスタジオ内に電気の照明装置を取り付けた。

 作品も多く発表した。ベルギーの国王を皮肉った作品である「パリ=モンテカルロ間を二時間で走る自動車旅行」や、ペーソスとユーモアの映画「クリスマスの天使」、第二スタジオで撮影された最初の作品である「千一夜物語」などである。

 一見、順風満帆に見えるメリエスであったが、実際はこの年から凋落が始まっていた。制作費の高騰からメリエスは自らの作品に高額の値段をつけたため、興行師がだんだんメリエスの作品を買わなくなっていたのだ(「千一夜物語」も高すぎるという興行師側の抗議から、安い短縮版が作られた)。