主題の危機への対応

 この頃、同じような内容の作品を繰り返し製作していた映画に、観客は徐々に顔を背け始めていた。そんな状況に対応するため、高尚な主題を映画化する試みがフランスで行われ始めていた。

 「放蕩息子」(1907)という作品は、劇作家ミシェル・カレが書いた無言劇の映画化であり、カレ自身が演出した。2時間ほどの大作だが、映画の経験がないカレの演出はひどかった。だが、権威のあるカレが映画を撮ったことで、低級という映画の誤解が払拭されたと言われている。

 この動きに呼応するように、この年「フィルム・ダール社」(ダールは芸術・アートの意味)が設立されている。劇作家アンリ・ラヴダンの呼びかけで、アカデミー会員の俳優、作家などが参加したこの会社は、高尚な主題に取り組んでいくこととなる。