ジョルジュ・メリエス作品集(10)

「生きているトランプ(The Living Playing Cards)」(1904)

 メリエス演じる手品師が大きな板を持ってくる。トランプをかざすと次々に板がカードの柄に変化する。クイーンの札から女王を出したりキングの札から王を出したりする。

 どこか優雅な感じがするのは、ピアノ演奏のためもあるだろうが、奇術を映画に映したような雰囲気によるのかもしれない。クイーンのトランプの絵がゆっくりと人間の女王になるシーンでは、ドラムロールが聞こえてきそうだ。それだけでは終わらないのがメリエスで、出そうと思っていなかったキングが出てきて驚いて逃げ出したかと思うと、キングの扮装を解くとメリエス自身が扮しているというオチをつけてくれる。

 短い作品だが、起承転結がしっかりと練られている。それは奇術ではおなじみともいえるものなので、様式美ともいえる優雅さを醸し出してもいる。メリエスはすばらしいエンターテイナーだ。

 ジョルジュ・サドゥールによれば、この作品はパテ社のガストン・ヴェルの作品を剽窃したものだという。もし、そうだとしても面白い作品を見たい私たちにとっては、面白い方がよい。ガストン・ヴェル版を見ることができない現状では、その結論を出すことはできない。


私が見たメリエスの映画が見られるDVD・ビデオ
「THE MOVIE BEGIN」(アメリカで発売されているDVD)
「フランス映画の誕生」(ジュネス企画
本「死ぬまでに見たい映画1001本」の付録
死ぬまでに観たい映画1001本