ジョルジュ・メリエス−映画を見世物に向かわせた男(1)

 ジョルジュ・サドゥールは「月世界旅行」を評して次のように書いている。

「この映画が成功したのは何といっても完璧に調和しあい、想像力が横溢している衣装と舞台装置を創りだしたことにある」(世界映画全史vol.3)

 メリエスの作品は、舞台をそのまま映したものだった。そのために、移動撮影、クロース・アップ、カットバックといった映画的な技法は用いられていなかった。にも関わらず、メリエスの作品は、物語と想像力の映像化という意味で、少なくとも当時は特別な存在だった。さらに、サドゥールは次のように書いている。

「撮影機は自然と生活を記録する機械にすぎないとする初期の映画人の単純な考えは、映画が病気にかかった1987年から1902年までの幼年期の間に脱落したのであった。
この時期の間に映画が脱皮を遂げなかったとしたら、教育や情報や学術研究の道具以外の何物にもなろうとしなかったら、映画は十年間で何千万人もの人々の見世物への渇望を満足させる産業には決してなりえなかったであろう」(世界映画全史 vol.3)

 「脱皮」の言葉から連想されるように、メリエスの作品がリュミエールの作品よりも優れているわけでは決してない。だが、確かにメリエスの物語や想像力の映像化への努力がなければ(それは見世物化への努力といってもいい)、映画は見世物としての隆盛を見ることはなかったのかもしれない。


私が見たメリエスの映画が見られるDVD・ビデオ
「THE MOVIE BEGIN」(アメリカで発売されているDVD)
「フランス映画の誕生」(ジュネス企画
本「死ぬまでに見たい映画1001本」の付録
死ぬまでに観たい映画1001本