ジョルジュ・メリエス−映画を見世物に向かわせた男(3)

 メリエスといえばトリック映画だ。だが、メリエスは決してトリック映画の発見者ではない。トリック映画にこだわったという意味において、「メリエスといえばトリック映画」となったのだ。

 メリエスは映画製作の最初の最初からトリック映画を製作したわけではない。最初は、リュミエール兄弟流の日常のスケッチ的な作品を製作していた。構図から何からリュミエール兄弟の作品を真似た作品もあるというくらいだ。そんなメリエスがトリック映画を作るきっかけになったエピソードがある。

 街の通りを撮影中、トラブルが起こりカメラを一度止めた。トラブルが解決し再びカメラを回して撮影を行い、現像したフィルムを上映してみてメリエスはびっくり。馬車は霊柩車に、男性は女性に一瞬にして変わっているではないか。メリエスはこれをヒントに奇術師として自らが舞台で披露している出し物の映画化を思いついた。

 メリエスが行っていたのは、テーブルマジックのような小規模なものではなくて、舞台を使って演じられる比較的大規模なものだった。デビッド・カッパーフィールドのようなイリュージョンといえば大げさだが、その類のものだった。その種のものを見たことのある人ならわかると思うが、出し物のなかには人が消えるというタイプのものが多くある。メリエスはカメラのトラブルの結果から、人が消える映画に思い至ったのだ。



私が見たメリエスの映画が見られるDVD・ビデオ
「THE MOVIE BEGIN」(アメリカで発売されているDVD)
「フランス映画の誕生」(ジュネス企画
本「死ぬまでに見たい映画1001本」の付録
死ぬまでに観たい映画1001本