ジョルジュ・メリエス−映画を見世物に向かわせた男(4)

 メリエスは一瞬にして人が消える映画を、カメラの機能を使って撮影した。今から見ると、それはあからさまにどのようにして撮影されたかがわかる。しかし、当時の観客にはカメラの機能なんて知らない。観客には受けて、メリエスは同じタイプの作品を多数製作する。

 奇術の発展は、技術の発展でもある。映画がスクリーンプロセスという技術から登場人物が世界各地にいるように見せることができるようになったり、CGという技術からこの世にはないものを映像化できるようになったりしたのと同様に、奇術においてはピアノ線が人や物を宙に浮かべることを可能にしたり、鏡の使用がテーブルの上に首だけ乗っかっているように見せることを可能にしたりしてきた。

 映画は映画である。実際にそこにいる人物が演じているのとは違う。その意味で、メリエスは決して奇術に映画を利用したわけではない。奇術の発想と映画の機能を融合させたという方が正しいだろう。それは言い換えれば、映画を奇術のような見世物の方向へと向かわせたとも言える。



私が見たメリエスの映画が見られるDVD・ビデオ
「THE MOVIE BEGIN」(アメリカで発売されているDVD)
「フランス映画の誕生」(ジュネス企画
本「死ぬまでに見たい映画1001本」の付録
死ぬまでに観たい映画1001本