デンマークの映画製作

 デンマークでは、ノーディスク社が久しく映画製作の中心となっていたが、この年キノグラーフェン社という映画製作会社がノーディスク社の演出家であるアルフレズ・リンと俳優のロバート・ディネセンを引き抜き、大作「四人の悪魔」(1911)の製作に乗り出している。

 「四人の悪魔」(1911)は、サーカスの舞台裏を舞台に、曲芸師の2つのカップルを描いた作品で、興行的に大成功を収めた。

 ノーディスク社は、1910年にトーマス・S・ヘルマンスンのフォトラマ社が製作して大ヒットした「白人奴隷売買」「奴隷売買人動く」(1910)に対抗して、同タイトルの作品を製作していた。ノーディスク社のボスであるオーレ・オルセンはヘルマンスンと会談。ヘルマンスンから権利を得て「白人奴隷売買の最後の商談」(1911)をノルディスク社で製作した。

 当時、デンマーク映画は人気を得ており、ヨーロッパ全土に映画を売り、世界の映画界に君臨していた。オルセンのノーディスク社はその中心だった。だが、そんなオルセンも映画機材の面では世界を支配できなかった。それは北欧諸国の資本力の弱さを物語るものであるとも言われる。



(映画本紹介)

無声映画芸術への道―フランス映画の行方〈2〉1909‐1914 (世界映画全史)

無声映画芸術への道―フランス映画の行方〈2〉1909‐1914 (世界映画全史)

映画誕生前から1929年前までを12巻にわたって著述された大著。濃密さは他の追随を許さない。