エジソン社の作品 1895年

 1895年はリュミエール兄弟による上映タイプのシネマトグラフの有料上映が始まった年だが、アメリカではエジソン社の覗き見タイプのキネトスコープの興行が行われていた。エジソン社では、キネトスコープと蓄音機を組み合わせて音声つきの映像の試みも行われ、「フォノグラフ」として発売されている。


「BILLY EDWARDS AND THE UNKNOWN」(1895)

 ボクシングの試合の様子を撮影。観客の存在によってリアリティを出そうとしているが、背景が真っ黒なことからスタジオで撮影用に行われた試合であることがわかる。


「DICKSON EXPERIMENTAL SOUND FILM」(1894−1895)

 バイオリンを弾く男性と、音楽に合わせて踊る2人の男性の様子を撮影。
 この作品は、エジソン社で映画開発を主に担当したウィリアム・ディクソンが、音と映像の同期を目指して行った実験フィルムである。蓄音機の音との同期を目指したといわれ、私が見たDVDでは、実際の音も聞くことができた。音はかなり貧弱で、しかも映像と合っているようには見えなかったが、音と映像の同期の最初期の試みとして貴重な作品だ。
 ちなみに、キネトスコープに音を同調させた「フォノグラフ」は45台ほど売れたのだという。


「PRINCESS ALI」(1895)

 1人のアラブの女性が、数人の女性の叩く太鼓のリズムに合わせて踊る様子を撮影。
 バーナム&ベイリーサーカスに所属していた女性によるものだという。


「ANNABELLE SERPENTINE DANCE」(1895)

 当時有名だったアナベラによるダンスを撮影。ヒラヒラした袖などを使って踊る。リュミエール社の作品にも同じものがあり、当時かなり有名だったのだろうことがわかる。着色されたバージョンもあり、途中で色が変わったりもする。


「メリイ女王の死刑(THE EXECUTION OF MARY, QUEEN OF SCOTS」(1895年)

 女王の首に斧が振り下ろされ、首が転がるという舞台の一場面を撮影。ショッキングな映像は、何も知らない人に「本物だ」といったら信じるかもしれない。よく見ると、女王が首を垂らした瞬間に人形に変わっていることがわかる。モノクロのチラつく映像が、今のきれいな映像に慣れた身には真実味を感じさせる。この感覚は不思議だ。
 またこの作品は、ジョルジュ・メリエス以前にストップ・モーションによるトリックが使われていた例ともいえる。



(DVD紹介)

Edison: Invention of the Movies [DVD] [Import]

Edison: Invention of the Movies [DVD] [Import]

映画初期のエジソン社製作の映画を大量に見ることができる4枚組DVD−BOX。各作品についての解説(英語)もあり、かなり親切な作りになっている。

注意!・・・「リージョン1」のDVDです。「リージョン1」対応のプレイヤーが必要です。