フランス・パテ社、フェルディナン・ゼッカの作品 1901年(2)

「HISTOIRE D'UN CRIME(ある犯罪の物語)」
 パテ社に所属していたフェルディナン・ゼッカが監督した作品。ゼッカは他社の作品を模倣した作品を多く製作し、パテ社に量の面での充実を与えた監督だが、この作品のような社会の暗部やスキャンダラスな際物的な作品では独創性を発揮したという。

 ストーリーは、「ある男性が深夜に強盗に入り、家人に見つかってしまったために殺してしまう。男性は逮捕され、拘置所で犯罪に至る過程を夢に見る。死刑が執行されることになり、男性はギロチンで首を落とされる」というもの。

 ジョルジュ・メリエスの作品のように、カメラは固定されて、舞台を撮影するような視点で撮られている。演技も非常に演劇的だ。おもしろいのは、拘置所で眠っている男性が犯罪に至る過程を夢に見るシーン。画面の下の方では男性が眠っており、その上に家族と団欒する様子や酒場で賭けゲームに負けてしまう様子などが二重露出で描かれている。今ならば、回想シーンとして描かれるところだろうが、舞台と同じ手法で撮影されている。

 他におもしろかったのは、縦の構図を使用しているシーンがある点。ギロチン台へと連れて行かれる男は、画面奥に向かっていく。ギロチン台がある画面奥は明らかに書き割りなのだが、画面に奥行きを持たせる工夫が施されている。

 ラストでは、ギロチン刑が執行され、首が落ちる。ここでは、メリエス作品でもおなじみの入れ替えのトリック(撮影を止め、人形と取り換えている)が使われている。これが、なかなか迫真性がある。エジソン社の「メリイ女王の死刑」(1895)でも同じようにギロチンで首が落ちるシーンが撮影されているが、こちらも迫真性があった。画面の粗さや舞台を撮影するように撮られているためにカメラと被写体が遠いこともあってよくわからないこと、モノクロであることなどが、人形の首であることを都合よくわかりにくくしているように思える。

 また、シーンとシーンの間をすべてオーバーラップでつないでいるのも特徴といえる。


(ビデオ紹介)

「フランス映画の誕生」
 ジュネス企画から発売されている初期フランス映画の作品集のビデオ。

ジュネス企画HP
http://www.jk-cinema.com/