エジソン社の作品 1905年(10)

「THE NIGHT BEFORE CHRISTMAS」

 エジソン社の作品。エドウィン・S・ポーター監督。

 クリスマス・イヴ。サンタ・クロースからのプレゼントを心待ちにする子供たちの様子と、プレゼントを届けるサンタの様子を描く。

 皮肉も風刺もなく、クリスマスの楽しい部分を抽出して作られた作品。「これでもか」と言わんばかりにクリスマスの楽しさを謳い上げたこの作品は、今ではもう作ることはできないのではないかと思わせるほど純粋だ。

 「大列車強盗」(1903)のような、ロケとセットの融合による空間の拡がりはない。その代わりにジョルジュ・メリエス的なよく出来たミニチュアによる撮影が見られる。サンタ・クロースがトナカイの引っ張るソリに乗って、田舎から街に出てくるまでのシーンがそれで、横に長いミニチュア・セットは人目でミニチュアと分かるものの、それゆえに愛らしさもあり、映画の内容とマッチしたほんわかとした雰囲気を醸し出している。

 また、サンタ・クロースが準備をしてプレゼントを運びにやって来る様子と、それを待ち望む子供たちの様子がパラレルに描かれているという話法は、単純にシーンを羅列する手法からの移行が見られる。

 子供たちが浮かれた気持ちを表現するために、枕投げとそれに続く枕の中の羽毛が飛び散るシーンが印象的だ。エジソン社には、最初期に女学生たちが枕投げで楽しむ様子を撮影した1分程度の作品があり、後にチャップリンは「黄金狂時代」(1925)で応用してみせることになる。


「HOW THE OFFICE BOY SAW THE BALL GAME」

 1人の青年が、嘘をついて仕事をサボる。電柱の上に上って、望遠鏡を使って、野球を見る。
 一応のストーリーはあるが、メインは野球の試合のシーンだろう。だが、取り立てて、おもしろいシーンがあるわけではない。


「THE BURGLAR’S SLIDE FOR LIFE」

 アパートの部屋に侵入した男が窓から逃げ出す。洗濯物を干すために隣のアパートとの間に張られた紐にぶら下がってスライドしながら逃げていく。
 スライドするアクロバットがメインだが、それほどの迫力はない。


「HOW JONES LOST HIS ROLL」

 製作国アメリカ エディソン・マニュファクチュアリング・カンパニー製作・配給
 監督・撮影エドウィン・S・ポーター

 親切な隣人に夕食に誘われた男は、いかさまポーカーにはまって身ぐるみを剥がされてしまう。

 文字が動いて文章を形作っていくのが、アニメーションで表現されている。この手のアニメーションの使用では最初期のものだという。




(DVD紹介)

Christmas Past [VHS] [Import]

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サイレント期に製作された、クリスマスをテーマにした作品集。今も昔も特別な日であるクリスマスは、もちろん映画草創期から取り上げられやすい題材だった。