D・W・グリフィスの作品 1910年(5)

「THE FUGITIVE」

 D・W・グリフィス監督作品。バイオグラフ社製作。

 時は南北戦争北軍の兵士が、南軍の兵士を撃ち殺すも追われる身となる。逃げ込んだ家には、自分が殺したばかりの南軍の兵士の母親が住んでいる。母親は北軍の兵士を追い出そうとするが、北軍の兵士の母親のことを考えて、追っ手から逃がしてやる。

 グリフィスは自らが南部のケンタッキー出身ということもあり、南北戦争を扱った作品では南軍側が主人公であるケースがほとんどだ(後の「国民の創生」1915も)。この作品も、メインは南軍側なのだが、全体的な印象は南軍側に寄ってはいない。南北戦争アメリカ全体の悲劇として捉え、両軍の兵士と彼らの母親への悲しみを描いた作品となっている。偶然の要素が多いものの、15分という短いストーリーは、同じような境遇の南軍と北軍の家族の悲しい物語をスムーズにつむぐことに成功している。

 グリフィスの演出は比較的平板だ。ショットとショットのつながりはスムーズで、物語をすんなりと理解することができるが、胸を打つ一瞬には出会えなかった。



(DVD紹介)

「The Birth of a Nation & The Civil War Films of D.W. Griffith 」

 日本でもDVDが発売されている「国民の創生」(1915)のアメリカ版DVD。こちらは、「国民の創生」についての特典映像に加えて、「THE FUGITIVE」のような南北戦争を描いたグリフィス監督作品を見ることができる。

 アメリカのamazonから輸入して買うことができるが、もちろん英語。それでも買いたいと思う人は、下記サイトが参考になります。

http://dvd.or.tv/
 
注意!・・・「リージョン1」のDVDです。「リージョン1」対応のプレイヤーが必要です。