映画評「AFGRUNDEN」 デンマーク アスタ・ニールセン主演作

[製作国]デンマーク [英語題]THE ABYSS [製作]コスモラマ
[監督・脚本] ウアバン・ギャズ [出演]アスタ・ニールセン、カーレン・ブリクセン、ポウル・ルーメルト

 ピアノの先生をしているマギアは、中流階級の男性と恋に落ちる。男性の別荘に招かれて過ごすことになったマギアだが、野性的なサーカスの男に惹かれて駆け落ちしてしまう。だが、サーカスの男は暴力的で浮気性だった。

 サイレント期のヨーロッパ映画初のスター女優と言われるアスタ・ニールセンのデビュー作だ。同時期の作品は短編が多く、アメリカではD・W・グリフィスが数々の技巧を駆使しながら珠玉の短編を撮っていた。この作品はメロドラマで、技巧的に優れた面は持っていないもののグリフィス作品にない艶かしさを感じさせる。中盤のヴォードヴィルショーと思われる舞台で、縄でしばった男の周りを腰を押し付けながらゆっくりクルクルと回るシーンの艶かしさや、こういったシーンに時間を割くという発想はグリフィス作品にないものだ。

 デビュー作にしてニールセンの魅力を押し出すことを中心に考えられた作品である。当時女優の魅力を全面に押し出したタイプの作品はなく、ニールセンの作品が人気を呼んだ理由を感じることが出来る。