D・W・グリフィスの作品 1911年(7)

「THE MISER'S HEART(守銭奴の心)」

 D・W・グリフィス監督作品。バイオグラフ社製作。

 病気の母親を持つ少女は、1人で遊んでいるうちに、隣人の守銭奴の老人やホームレスの男と自然と仲良くなる。そんなとき、2人組の強盗が守銭奴の家を襲う。金庫の番号を教えてない守銭奴の口を割らせようと、強盗たちは少女を窓の外に吊るして守銭奴を脅す。

 かなり複雑なストーリーだ。上記にプラスしてホームレスの男がパンを盗んで追いかけられるシーンもある。また、この後にはホームレスの男が吊るされている少女を見つけて警察に通報するが、パンを盗んだ罪で捕まってしまうといった展開が待っている。

 驚くべきは、この作品は1巻物(約15分)の作品であるという点だ。これだけ豊穣な内容ながら、15分で収められているのは、映像で物語を語るグリフィスの技術が向上していることを示している。複数の場所で行われる出来事を、これまでの以前の作品よりも短めのショットを積み重ねることで重層的に描くことで、短い時間で多くのことを語ることが可能になっている。

 守銭奴の口を割らせるために、強盗たちは少女を吊るしている紐にロウソクの火を近づける。そのとき、紐が焦げていく様子がクロース・アップで捉えられている。グリフィスが発展させたといわれているクロース・アップの使用法の一例といえる。

 グリフィスは、物語を語る術を向上させることで、短い時間でもそれまでよりも複雑なストーリーを語ることに成功している。一方で、かつての作品にあった叙情的なシーンが失われてもいるように思えるが、この作品のラスト(少女を助けるために警官を呼んだホームレスが、これまでと変わらず路上に眠りにつくシーン)にはかつての作品のような叙情性を多少感じさせる。



(DVD紹介)

「Biograph Shorts 」

 バイオグラフ社監督時代のD・W・グリフィスの作品を集めた2枚組DVD。ほぼ15分程度の短編が、全23作品収められている。デビュー作「ドリーの冒険」も収録。

 アメリカのamazonから輸入して買うことができるが、もちろん英語。それでも買いたいと思う人は、下記サイトが参考になります。

http://dvd.or.tv/


注意!・・・amazonでは「リージョン1」となっていますが、私が持っている日本国内用の「リージョン2」のプレーヤーでも再生できました。リージョンは「オール」と思われますが、実際に購入して見られなくても責任は負いません。