フランス ゴーモン社の作品 1911年

「ローマの大饗宴(L’ORGIE ROMAINE)」

 ゴーモン社製作 監督ルイ・フイヤード

 ローマ皇帝ヘルガバルスは、贅沢な日々に加え、ちょっとしたミスをした部下をライオンに食い殺させるなど、暴虐な振る舞いを行っていた。しかし、ヘルガバルスは自らの親衛隊によって殺害されてしまう。

 本物のライオンを使って撮影が行われている。うろうろと歩くだけのライオンは迫力に欠けるものの、スパイスの役割を果たしている。

 ヘルガバルスによる贅沢で暴虐な性格は、その饗宴の描写の見事さなどによく現れている。そんなヘルガバルス自身が殺されるシーンでは、殺害や首をはねる描写自体は映らないものの、それを見つめる兵士たちの反応によって、存分に描かれている。このあたりに、フイヤードの監督としての腕前を感じさせる。


「LA TARE」(1911

 英語題「THE DEFECT」 製作国フランス
 Société des Etablissements L. Gaumont製作 監督ルイ・フイヤード 出演レネー・カール

 ダンス・ホールで働いているアンナは、慈善病院の所長に招かれて、病院の看護婦となる。有能なアンナは、病気で倒れた所長に後任に就任する。だが、ダンス・ホール時代に付き合っていた男が、アンナのことを知り、恐喝にやって来る。

 40分強の作品で、1911年当時では大作と言える。人格的にも周りから認められ、有能なアンナだったが、周りの人々はアンナの過去を許してくれない。ラストが尻切れの印象を受けるのは、フィルムが失われてしまったか、あまりにも暗いラストを避けるためかのどちらかだろう。

 フイヤードの演出は舞台的だ。基本的に固定カメラで、俳優たちの頭から足の先までが収まるように撮影されている。つながった2部屋を横に移動しながら撮影したシーンがあるが、これも舞台演出の延長である。

 1911年当時を考えると、長時間をかけて1人の女性のドラマを社会の不寛容さを交えて描いた点は評価すべきだろう。だが、それ以上でも、それで以下でもないというのが正直な感想だ。


「LE TRUST, OU LES BATAILLES DE L’ARGENT」(1911

 英語題「THE TRUST」 製作国フランス
 Société des Etablissements L. Gaumont製作 監督ルイ・フイヤード

 新しいゴムの製法を見つけた企業の社長に対して、トラストが秘密を探ろうとする。

 歴史や宗教に題材を求めていたフイヤードの作品は製作費がかかった。そんなフイヤードに対して、ゴーモン社は製作費の削減を求めたという。その結果作られた作品が、「ありのままの人生」シリーズと銘打って上映された。上流階級の恋愛や生活を描いたものだったという。

 この作品は、トラストの悪事とそれに対抗する人々を描いた作品である。だが、トラストの悪事はあくまでの題材にとどまっている。悪事をきっかけに、機知に富んだスパイ合戦のような内容を楽しむ作品となっている。

 フイヤードの演出には特に工夫は感じられず平凡な作品といってしまえばそれまでだが、現在にも通じる娯楽作の枠組みによって作られている点には触れておきたい。内容(ストーリー)で楽しませる娯楽作であり、当時の作品にはあまり見られない先駆的な作品と言える。


「CALINO VEUT ETRE COW-BOY」(1911

 製作国フランス 英語題「CALINO WANTS TO BE A COWBOY」
 Societe; des Etablissements L. Gaumont製作
 監督ジャン・デュラン 出演Clément Mégé、Joe Hamman、エルネスト・ブルボン、Édouard Grisollet

 アメリカの西部で投げ縄の技を見たカリノは、自宅で真似てみるがうまくいかず、家具を倒したり水道管を破裂させたりしてしまう。

 中盤までは投げ縄の技で楽しませ、後半はカリノが引き起こすカオスで楽しませてくれる。映画草創期には、既存の芸をそのまま撮影した作品が人気を集めた。この作品は、そうした楽しさと、カリノというキャラクターの楽しさを融合させようとした作品と言えるだろう。


「ZIGOTO ET L'AFFAIRE DU COLLIER」(1911

 製作国フランス 英語題「ZIGOTO AND THE AFFAIR OF THE NECKLACE」
 Societe; des Etablissements L. Gaumont製作
 監督ジャン・デュラン

 探偵のジゴトは、ネックレス盗難事件の捜査を頼まれる。

 大げさなヒゲを生やしたジゴトの存在自体はそれほど面白さを感じなかったが、秘密結社のアジトのような探偵事務所の作りといった細かい部分に遊び心が感じられる作品。ありがちといえばありがちなオチだが、分かりやすく楽しめるようにできている。


「LES CHALANDS」(1911

 製作国フランス 英語題「THE BARGES」
 Societe; des Etablissements L. Gaumont製作
 監督ジョルジュ=アンドレラクロワ

 川での船乗りとして生きる男は、娘が森を仕事場とする男と恋していることを知って、怒りから叩いてしまう。娘は男の元へと逃げてしまう。

 静かな展開の中で、地味な物語が展開される。だが、ロケは効果を上げており、川の男の意地を感じることが出来る。